毘沙門天立像
(姫路市指定重要文化財)一軀 木造・玉眼 像高 60,17㎝ 鎌倉時代前期
右腕を上げて左手を腰に当て、腰を左へ振って二匹の邪鬼の上に立つ割矧造りの像である。
現状では後補の漆が塗られているが、当初の彩色や截金がかすかに残る。像内にクスノキ材の宝塔が納入されており、さらに宝塔の内部に は舎利と籾を三粒づつ入れた水晶製舎利容器がある。
身にまとう甲冑には胸、腕、脚部等に金銅製の菊座がみられ、これは運慶作の静岡県願成就院の毘沙門天像と同じ意匠である。
表情は端正で気迫に富み、体部は均整がとれ、動勢を感じさせるなど作風からも鎌倉前期の慶派仏師の作であると考えられる。
(兵庫県立歴史博物館発行「寺院の絵画・大覚寺」より)
■寺宝よもやま話■ ―毘沙門天のこと―
多聞天ともいいます。古代インドにおいては北方を守護する神で、財富の神とされていました。 四天王の随一として仏の道場を守護し、また人々に財を授ける 神として民衆に崇拝されています。わが国では七福神の一つに数えられ、いかつい武将姿で貧乏神を追い払ってくれるのです。
この毘沙門天をご本尊とするお寺としては、京都の鞍馬寺が有名です。都の北に建てられて千年の間王城を守護しているのです。
また毘沙門天を信仰した武将としては、越後の上杉謙信がよく知られています。