地蔵菩薩来迎図
(姫路市指定重要文化財)絹本著色 一幅 97.8×39.8 室町時代(15世紀)
右手に錫杖、左手に火炎宝珠をとり、飛雲に乗る地蔵菩薩が六道で苦しむ衆生を極楽浄土へ導くべく来迎する。
地蔵の頭光上部には毘沙門天も来迎する。
着衣の彩色、金泥・截金の装飾が華麗で濃麗な仏画に仕上がっているが、像容全体をやや重くする。
地蔵の独尊来迎は、唐末の偽経とされる『仏説地蔵菩薩経』に説かれるが、毘沙門天を合わせた本図の図像的な典拠を今明らかにしえない。寺伝には空海作と される。
なお、両手の構え、光明の有無を若干異にするが、滋賀・明徳院本を最も近似する先行作としてあげられる。
(兵庫県立歴史博物館「寺院の絵画~姫路市・大覚寺」より)
■寺宝よもやま話■ ― 地蔵菩薩の話 ―
お地蔵さんは日本人に一番親しまれている仏さまです。サンスクリット語でクシティ・ガルバといい、「母なる大地」という意味があります。大地があらゆる命を包み育てる、という意味で「地蔵」と訳されたので す。
釈尊が世を去ってから五十六億七千万年後に、弥勒菩薩がこの世に現れるまでのあいだを「無仏の時代」といいます。
この時代は五濁悪世という、あらゆる汚れにまみれた世界になるので、釈尊は地蔵菩薩に無仏の時代を守ってくれるように頼んだといわれています。
それで、地蔵菩薩はこの世にとどまって人々を教え導き、救済するという誓いを立てました。
中でも「地獄のような苦しみを人々に代わって受ける」という誓いがあります。これを「代受苦」といいます。
僧形をしているのは、我々と同じ娑婆世界にいて代受苦の誓いを実行している姿なのです。
それにしても、この地蔵菩薩は美しい。
東大寺公慶堂にある、快慶の作という鮮烈な美しさの地蔵像を画像にしたような、若々しく瑞々しい絵です。
こんなすっきりとした顔になりたいものですね。