山越阿弥陀図
紙本著色 一幅 112.2×51.9 江戸時代(17世紀)
山越阿弥陀図は、阿弥陀に超現実的な巨大性をあたえ、来迎の迫真性を高める特殊な構図に特徴ある正面向き来迎図の一形式。
阿弥陀浄土での説法を表す転法輪印を結ぶ巨大な阿弥陀が、折り重なる山あいから半身を現す。
山肌にわきたつ白雲・霞が強調されるが、伝統的な大和絵的手法を離れた硬化した表現で、江戸時代ごく初めの制作であろう。
もと大覚寺塔頭の実津院伝来。
■寺宝よもやま話■ ― 山越の弥陀 ―
時代が末法に入る68年前に、恵心僧都源信というお坊さんが「往生要集」という本を著しました。
この影響で、わが国に阿弥陀信仰が急速に広がりました。
臨終に際して阿弥陀如来は、西方浄土から観音と勢至の両菩薩を従えて、念仏の行者を迎えに来るという信仰は、多くの来迎図となって描かれました。
阿弥陀仏が二十五菩薩を従えたものは、「聖聚来迎」と呼ばれています。
中でも緩やかな尾根の連なる山並から、大海を背に転法輪印を結ぶ阿弥陀仏が姿を現す図像は「山越の弥陀」と呼ばれています。
永観堂禪林寺にある山越阿弥陀図は、国宝に指定されていて、最古にして最も優れた作品といわれています。