阿弥陀三尊来迎図
絹本著色 一幅 128.3×56.4 室町時代(15世紀)通形の来迎印を結ぶ正面向きの阿弥陀如来を中心に、向かって右に蓮台を捧持する観音菩薩、左に合掌する勢至菩薩が、やや内を向きほぼ直立する体勢で配される。
三尊とも皆金色身、着衣は截金で衣文のみ表す点が珍しい。像容全体に軽やかみが失われ、室町初期の制作であろう。一方、三尊の表情はふくよかで古様を示す。
これに関しては、両菩薩宝冠のリボンの様態から、当麻曼荼羅図の阿弥陀三尊を典拠とする作画が指摘される。
また阿弥陀の白毫部分の破損にはもと水晶が貼られ、左手の指の合わせ目に残る小さな穴は、臨終行儀の遺風を知る特徴的な痕跡で、総本山永観堂禅林寺蔵「山越阿弥陀図」が同様な形状を有することで著名である。
なお、裱背に享保一二(1727)年の修復銘があり、合わせて天正一五(1587)年の修復銘が転写されている。
そこに「於南都表補師慶春奉修復之」とあって、この慶春は、当寺蔵当麻曼荼羅図の?背墨書(写/天正一七年)にも「表甫同南都之慶観慶春執行之」として名がでる慶春と同人と考えて差し支えない。
この時期の大覚寺住持・政天智淳による南都絵所(芝座)との接触が偲ばれる。
(兵庫県立歴史博物館発行「寺院の絵画・大覚寺」より)