大涅槃図
紙本著色 一幅 室町時代 永禄九年(1566)施入の銘あり
■寺宝よもやま話■ ― 涅槃(ねはん) ―
すでに80歳を過ぎた釈尊は、弟子のアナンと数名の弟子たちをつれて最後の布教の旅にでます。
途中、熱烈な信者だったチユンダという鍛冶屋に招かれます。
チユンダは貧しい鍛冶屋でしたが、崇拝する釈尊のために最高のもてなしをしました。
ところが、このときに食べたきのこ入りの料理で中毒をおこし、釈尊は激しい下痢と発熱におそわれます。
死期が近いことを悟った釈尊は、クシナガラというところにある沙羅の林の中に、頭を北にして、西側を向き、右腹を下にして横たわりました。
釈尊に別れを告げようと多くの人が各地から集まってきます。
「自身を島とし、自身をよりどころとして他によることなく、真理を島とし、真理をよりどころとして他に依ることなかれ」
これが最後の教えでした。
「あらゆるものはうつろいやすいものである。怠ることなく、精進せよ」
これが最後の言葉でした。
日本では釈尊がなくなったのは二月十五日とされ、この日には各地の寺院で涅槃図をかけて、「涅槃会」という法要が営まれます。
画面には菩薩や仏弟子のほかに52種の生き物が描かれ、右上には釈尊の実母・マーヤ夫人が兜卒天から薬をもって駆けつけた姿が描かれています。