大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2008年(平成20年)4月のミニミニ法話・お説教

2008年(平成20年) 4月

玄禮和尚のお説法

2008年(平成20年) 4月

~ 第001回 「共に学ぶ」 ~

私の住する寺の近くに県立網干高校があり、毎年全日制の一年生が寺を訪れて話を聴いてくれます。そのご縁でこの度初めて「通信制」の生 徒に講演の依頼を受けたのです。

 玄関に着くと「共に学ぶ」の言葉が刻んであるモニュメントが出迎えてくれました。
  橋本校長に案内されて会場の体育館に入ると、120人の生徒が待っていてくれました
が、そこには全日制にはない雰囲気がありました。

 生徒は15歳から70代まで。制服がないので服装はまちまち。彼らが歩いてきた人生も一人一人異なっていて、中学から高校へと順調に 進んできた生徒はほとんどいません。
  小中学校を通して不登校だった生徒、経済的理由で高校に進学できず、すでに社会の荒波を経験してきた者、結婚して家事や育児に励む女生徒など、その事情や 生活環境も様々です。
  ただ生徒それぞれが抱え込んだ事情は違っても、一つだけ同じものがあります。『勉学への意欲と高校卒業』という目標です。残念ながら今の社会では、まだ学 歴でランク付けすることが多く、ここで学ぶ生徒たちは、ほとんどがその為に苦労してきているのです。

 通信制高校は単位制です。教科書をもとに自学自習してレポートを提出し添削指導を受け、年間13日ほどのスクーリングがあって面接指 導を受け、当然テストがあり合格すれば卒業できます。

 ところが、家族をかかえ働きながら、育児をしながらの生徒にとっては、卒業にこぎつけること自体が大変です。「自学自習」というのは 自分との戦いなのです。ここ数年でいえば、転入編入を含めて300人余の入学者に対し、卒業できるのは100~150人。卒業まで5~6年かかる人もあり ます。それだけに卒業式を迎え目標を達成した喜びは、他のどの高校生よりも大きいといいます。

 『波濤を越えて』という卒業記念誌の平成19年3月号には、「高卒資格取得」という長く苦しい学びの道を、何度も挫折しそうになりな がらも歩き通した107名の写真があります。どの顔も成就感と達成感の喜びと誇りに満ちています。そして文集には、支えてくれた家族・友人・先生への感謝 と、共に学んだことの喜びの言葉で埋まっているのです。

 自分の力で成し遂げたことは、きっとこれからの人生を生きる力になることでしょう。
一生学ぶ姿勢を持ち続け、自立して力強く生き抜いてほしいと願いつつ校舎をあとにしました。

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