2011年(平成23年)12月のミニミニ法話・お説教
2011年(平成23年)12月
~ 第045回 「人生の暮れを染め上げる」 ~
秋から冬へと移る季節の変わり目が、近年はっきりしませんね。地球温暖化の影響なのでしょう。
11月中旬になっても小春日和が続いて、今年の永観堂の紅葉はかなり遅れました。が、下旬以降、にわかに朝夕の冷え込みが本格化し、見事な紅葉の景色とな りました。
春、芽生えたばかりの若葉。初夏、青嵐に吹かれて小さな花を咲かせ、やがて竹とんぼのような実を付ける青葉。盛夏、強烈な日の光を跳ね返して茂る壮葉。
秋、赤や黄に自らを染め上げていく紅葉。冬、空中を舞いながら散っていく枯葉。それは、まるで人の一生を見るようです。
◆うらを見せおもてを見せて散るもみじ
良寛さん74歳の時の句です。いよいよ臨終間近という時、歌の弟子であり純愛を貫いた貞心尼の求めに応じて与えた辞世の句です。
「貞心よ。お前にだけは私の表も裏も見せた。すべて見せた。そして安心して散っていくのだよ」
人間にとって自分の裏、つまり欠点も醜い部分も、すべて見せられる人を持つことは幸せですね。良寛さんにとって貞心尼は、そういう女性でした。
木の葉が落ちる前に美しく紅葉します。
なぜこのように散るときが一番美しいのかといえば、太陽の光と熱に照らされ、平均気温が10度以下になると紅葉が始 まります。葉の糖分から赤い色素が生成されて紅葉するのです。
◆あみだぶに染むるこころの 色にいでば 秋の梢のたぐいならまし
これは法然上人のお歌です。阿弥陀仏の慈悲の光に照らされると、それぞれの個性がひときわ美しく染められて、まるで秋の梢の紅葉のように輝いていますよ、 という意味です。
二度とない人生。せめて晩年は、より多くの人の幸せのために尽くそうとすれば、人は自分にしかない光を放ち、徳の香をただよわせることができるのです。
人生の暮れを、美しく飾りたいものですね。