2011年(平成23年)8月のミニミニ法話・お説教
2011年(平成23年)8月
~ 第041回 「ひまわりの花」 ~
真夏の太陽の下、東日本大震災の被災地でひまわりの花が咲いている景色をテレビで見ました。ひまわりが多くの人々を元気づけているようです。
向日葵と書くひまわりは、北アメリカが原産で、300年ほど前に日本に伝えられた花だということですが、今ではすっかり日本の夏の風土に定着しています。
花言葉は「あこがれ」「熱愛」「愛慕」「光輝」。そういえば、日本の気象衛星にも、この花の名がつけられていましたね。
ひまわり、といえば私と同世代の女性なら懐かしく思い出される雑誌がありますね。昭和二十年代に少女たちに熱狂的に読まれた雑誌、『それいゆ』『ひまわ り』。
昭和21年、戦後の退廃した世相の中で、女性に夢と希望を与え、賢く美しい少女であってほしいという熱意で、中原淳一さんが創刊したものです。
なにもない時代だったからこそ、少女たちは大輪の花「ひまわり」に夢と憧れを求めたのでしょう。大きな瞳をした少女のイラストやスタイル画で、戦前から人 気の高かった中原さんが表紙を描いて、川端康成・吉屋信子などのそうそうたる顔ぶれが執筆していました。
洋服の着こなしから、人間としての行き方の問題まで、中原さんが説いたのは、「少女には少女にふさわしいやり方がある」ということのようでした。
私と同世代の知人女性の何人かは、少女時代に『それいゆ』に出会い、雑誌からかもし出される美しい世界に触れた喜びを熱っぽく語り始めたら止まらない人が います。最近、復刻版が発行されて人気をよんでいると聞いています。
その中原淳一さんの言葉を雑誌で見つけました。
「もし、この世の中に風に揺れる花がなかったら、人の心はもっともっと荒んでいたかもしれない。
もし、この世の中に信じることがなかったら、一日として安心していられない。
もし、この世の中に思いやりがなかったら、淋しくて、とても生きてはいられない。
もし、この世の中に愛する心がなかったら、人間は誰もが孤独です」
少女の時代に美しいものに触れ、夢を求めた人は幸せですね。
風に揺れる花や、美しい夕焼けに感動する心があり、人を信じる心と、思いやりの心と、そして愛する心を失わなければ、人は決して孤独にはならないのです。
被災地に花を。少年や少女たちに、夢と希望と未来を信じる心を。