今月の法話

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

弟子のひとりごと ~末吉信禮~

2008年(平成20年) 5月

~ 第001回 「私の恩送り」 ~

 お師匠の今月の法話は「恩送り」です。私はそのご法話で、初めて「恩送り」という言葉を知りましたので、そのことをお師匠に伝えます と、「むかしからある言葉だよ。」と答えが返ってきました。
恥じ入りながら調べてみますと…

 「日本では、江戸時代までは恩送りという考え方と実践があったとされている。又、明治時代から高度成長期にかけて、次第に日本人は利己的で近視眼的な考 えにばかり駆り立てられるようになり、恩送りのような行動をとらない人が、都市部を中心にいつの間にか多数派になり、殺伐とした社会になってしまったとも され、近年になり、恩送りの考え方と実践を広く復活させ、良い社会をとりもどそうとする良心的な人々が、増えつつあるようである。」(フリー百科事典 『ウィキペディア』)
とありました。
 
 私の身近な「恩送り」と言えば、何といっても先輩に食事やお酒をご馳走になり、何度も何度も奢ってもらって申し訳ないと恐縮していると…
「気にせんでええ、こういうもんは上からの順ぐりや。俺も先輩にしこたま奢ってもらってるから、お前が俺の立場になった時に下のもんに奢ったったらええん や。」

としびれるお言葉。この「順ぐり」がまさに「恩送り」だと思います。この「恩送り」には金銭的な恩恵だけでなく、後輩を思いやるという大切な精神(ねが い)が受け継がれています。
 私は今年で42歳になりますが、いまだにその金言を受けてご馳走になっています。もちろん私も後輩とそういう機会がある時は「順ぐり」を心掛けています が、諸先輩のように豪快にいけないのが実情です。

 ところで、私には両親がいません。13歳で母が、17歳で父が他界しました。二人とも癌でした。
恩を知り恩を感ずる年齢になったというのに…
「孝行をしたい時には親はなし、墓にふとんは着せられず。」

  私にとって、亡くなった両親の親孝行が人生のひとつのテーマでした。「恩返し」をすることは叶いませんが、「恩送り」なら努力すればいくらでもできます。

お師匠が結語におっしゃられた「受けた教えを一人でも多くの人に伝えていこう」とは、ご恩を受けた相手その人の「ねがい」や「生き様」をも繋いでいく、そ ういうことではないかと私は思いました。

一人のねがいを 万人のねがいに
一人のいのりを 万人のいのりに
一人のあゆみを 万人のあゆみに
一人のゆめを  万人のゆめに
高めていこう 広めていこう 守らせたまえ 導きたまえ

(坂村真民氏『詩集 念ずれば花ひらく』より)

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