大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2014年(平成26年)11月のミニミニ法話・お説教

2014年(平成26年)11月

玄禮和尚のお説法

2014年(平成26年)11月

~ 第080回 「いい夫婦の日」 ~

 11月22日は「いい夫婦の日」。夫婦がいい関係でいるには、付かず離れず、がいいといわれています。

ふうふ、と発音すると上下の唇がくっつくようでくっつかない。この微妙な呼吸が大切なのですね。

 かつて、神戸にお住まいの杉田さんという男性の手記を読んだことがあります。

当時91歳の杉田さんは、平素から健脳・健眼・健脚、つまり頭がしっかりしていて、眼がまだよく見えて、足腰も達者であることを誇りにしていたのです。

が、ある日、「生まれて初めて老いの悲哀と悲劇をしたたかに知らされた」というのです。

 というのは、この日の朝、この人の奥さんが「疲れたので、一日寝させてください」といって、起き上ってこない。

しょうがないからパンをかじって、バナナを食べて、三宮の銀行へ貯金を出しに出かけたのです。

ところが、どの銀行だかわからなくて、ウロウロするうちに迷子(迷爺?)になりそうになって、とうとう帰りの電車に乗ったけれど、今度はどの駅で降りたら いいかわからない。

困ってしまって、途方にくれていたところ、隣の座席に座っておられたご婦人に助けられて、ようやく家に帰ることができたのです。

 「いつもは老妻の手を握って案内してやっているつもりだったのに、この俺が連れていってやっているつもりだったのに・・・。

実は十三歳年下の老妻に助けられて、今日まで平穏無事に暮らしてきたことがわかって、ヒヤリとした。

もしも、老妻に先立たれた場合の不自由さが思われて、愕然としたよ」と述べています。

 杉田さんはドイツに1年、アメリカで11年の海外生活をしていて、その経験から「日本の男性は妻に対して横暴過ぎはしないか?」

と英字新聞に論評を載せたこともあるほどの達者な人でしたが、「女房にたった1日寝込まれただけで、自分の無力さを知って、女房の千手観音さま的な生活能 力の多様さに感服せしめられた」と慨嘆しています。

 「幸福」とは、支えられていることに気付くこと。そして、それを「お蔭さま」と感じることです。

「いい夫婦」も、いつか別れなくてはならない時がきます。だからこそ、共にいる時に、うんと仲良くすることですね。

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