大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2014年(平成26年)2月のミニミニ法話・お説教

2014年(平成26年)2月

玄禮和尚のお説法

2014年(平成26年)2月

~ 第071回 「星の王子さま」 ~

  「星の王子さま」という童話を読んだことがありますか。

サン・テグジュペリの原作を、内藤濯さんの名訳で岩波書店から出版され、多くの人に読まれた本です。

童話といいながら、子どもの心を忘れてしまった大人た ちに向けて書かれたものです。

もし本棚にしまってあれば、もう一度出して読んでみて、そして子どもにも聞かせてやって下さい。

現代に失われつつある大切なものが見えてきて、きっと心洗 われる思いがするでしょう。

 もう34年も前ですが、富山県出身の医者・井村和清さんは骨肉腫のため右足を切断しました。やがて肺に転移して31歳で亡くなります。

その時、妻の倫子さんとの間にまだ幼い長女の飛鳥ちゃんがいて、倫子さんのお腹の中には小さな命が宿っていました。

二人の子供に書き残した遺書が「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」と題して出版されました。

 その中に、「星の王子さま」の中の次の文章を引用しています。

「大切なものは、いつだって、目には見えない。人はとかく、目に見えるものだけで判断しようとする。目に見えているものは、いずれは消えてなくなる。いつ までも残るものは、目に見えないものなのだよ。」

 そして、井村さんの遺書はその後にこう続けています。

「人間は、死ねばそれですべてが無に帰するものではない。目には見えないが、私はいつまでも生きている。おまえたちと一緒に生きている。だから、私に逢い たくなる日がきたら、手を合わせなさい。そして、心で私を見つめてごらん。」

そして、最後に「さようなら、おまえたちがいつまでもしあわせでありますように。雪のふる夜に。父より」という言葉で締めくくられています。

生まれてくる子の顔を見届けることなく逝く無念さと残された家族の幸せを祈るこころが、ひしひしと伝わってきます。

 目に見えるものよりも、目に見えないものの方こそ大切なのだと、星の王子がキツネから教えられた「秘密」は、いつの時代も、いや、物質文明の行き詰った 現代だからこそ、大切な教えなのです。

目に見えない大切なものとは・・・・。

 夢・希望・愛・友情・想像力・憧れ・信ずる心。そして、なによりも仏の慈悲。これらが私たちに輝かしいものを見せてくれるのです。

法話一覧へ