大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2014年(平成26年)8月のミニミニ法話・お説教

2014年(平成26年)8月

玄禮和尚のお説法

2014年(平成26年)8月

~ 第077回 「お位牌ペンダント」 ~

   病んで父を思ふ心や霊(たま)まつり  正岡子規

 お盆の先祖供養を「霊まつり」といいます。セミ時雨の中、水や花を手に先祖の墓参りに訪れる家族の列が続きます。

帰省した人たちも加わり、子どもたちもお墓の前で静かに手を合わせる姿。いつもながらの穏やかな古里のお盆の風景です。

 かつて、現代に生きる仏教の教えを受けた紀野一義先生から聞いた話を思い出しています。

ある小さな会社の社長さん。年は31か2。いつも両親の位牌を3センチくらいの大きさに縮小して、純金でこしらえて鎖で胸に下げているのです。ちゃんと戒 名も刻んであります。

実はこれには訳があります。その人の母親は、晩年にこっそり生命保険に加入して、息子を受取人にしました。

息子は怒って、「母さん、縁起でもないよ。死なれてたまるもんか!」と解約します。でも、また掛ける、また解約する・・・。

それでも、亡くなってみたらちゃんと掛けてあって、息子に保険金が入ってきました。結局、そのお金を全部使って純金のお位牌ペンダントを造ったのです。

「これを胸に掛けていると、両親がそばにいて守ってくれているように思えます」とその社長はしみじみ言ったそうです。

 この人に弟がいます。自分は高校しか出ていないけれど、弟は大学に通わせているのです。ところが、その弟が学生運動に夢中になって、勉強もしないで駆け ずり回っているのです。

そこで言いました。「お前なあ、学費は毎月家に取りに来い。けれど、その前に父さんと母さんのお墓を掃除してこい。そうしたら、いつでも出してやる。」

 弟は学費を出してもらわないとどうにもならないので、不請不請お墓の掃除を始めます。旦那寺の和尚が「なんとまあ、この家のお墓は綺麗にしてあるな あ!」と感心するくらい綺麗になりました。

やってみれば気持ちよく、気分も晴れやかになるので、弟は本気で墓掃除をしました。その頃から弟の態度が一変しました。

学生運動の仲間から自発的に身を引いて勉強を始めたのです。父を思い母を思う心が兄を助け、弟の生活を変えたのです。

 この兄弟は、確かに両親の霊に守られているのです。これを「冥加」といいます。人間の目に見えないところで仏菩薩、はたまた先祖から蒙るご加護。これが 「冥加」です。

 両親や先祖の恩を思い、仏さまを敬うこころを大切にいたしましょう。

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