大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2015年(平成27年)12月のミニミニ法話・お説教

2015年(平成27年)12月

玄禮和尚のお説法

2015年(平成27年)12月

~ 第093回 「篝火花(かがりびばな)」 ~

 年末から新年を迎える花、シクラメンが色どり豊かに咲きそろっています。軽くねじれて蝶の群れ舞うような花の形もいいし、葉がハートの形をしているのもいいです。

花の色も布施明さんの歌のように「真綿色」や「薄紅色」や「薄紫」など、しなやかな茎に支えられて咲き揃う姿は、まるで舞台のバレリーナーを思わせます。

可憐な姿に似あわず英語では「Sowbread」(豚のパン・豚の饅頭)と呼ばれていました。

名の由来は、球根が豚たちの大好きな餌だったという理由で、明治の初めに日本に入った頃も「豚の饅頭」と呼ばれていました。(シクラメンはラテン語)

 植物分類学の牧野富太郎博士が東京の新宿御苑に勤めていた時、ある年の正月に二、三人連れの貴婦人が温室を訪れました。

折から「豚の饅頭」、つまりシクラメンが咲き誇っているのを眺めて、その内のお一人が「名前に似ず美しい花ね。

まるで篝火(かがりび)が燃えているようね」と言われたのです。

案内役の牧野博士は、その素朴な批評を大変興味深く感じて、シクラメンの日本名を「かがり火花」と名付けました。

 その時の貴婦人は九条武子夫人だったのです。西本願寺の大谷家に生まれ、九条良致氏と結婚。

恵まれない子供や人々のための孤児院・診療所など社会救済事業のかたわら、和歌を佐々木信綱師に学び「無憂華」という歌集を遺しています。

 その中に次の一首があります。
「第一の歩みをそこに踏みしめて 道開き行く人に幸あれ」

この歌を口ずさむとき、法然上人のご一生を思わずにおれません。

上人は阿弥陀仏の本願によって、すべての人々が平等に救われていく他力念仏の教えを、数々の弾圧に会いながらも生涯かけて教え広められた方です。

凡夫往生の道を開き、念仏の一道を歩まれた方です。

 二度とない人生。自分にしかない人生。であるからこそ、法然上人の教えに従い、念仏とともに確実に、大らかに歩み続けて参りましょう。

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