大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2016年(平成28年)6月のミニミニ法話・お説教

2016年(平成28年)6月

玄禮和尚のお説法

2016年(平成28年)6月

~ 第099回 「幸福を育てる三つの田」 ~

  青梅の落ちゐて遊ぶ精舎の地  飯田蛇笏

 梅雨と書いて「つゆ」と読むのは、梅の実の熟するころに降る雨だからといわれています。以前は6月に集中的に田植えをしたのも、日本の自然の理に叶っているのです。

 ところで、「幸福を育てる三つの田」という教えが仏教にあり、「三福田」と呼ばれています。

その一つは「敬田(きょうでん)」。敬いの心を育てよう、という教えです。何を敬うのかといえば、聖徳太子が十七条憲法で「篤く三宝を敬え」と述べられたように、仏(仏さま)・法(仏の教え)・僧(教えを信じる人々の集団)を敬う心をいいます。

第二は「恩田(おんでん)」。父母の恩を始めとして、お世話になった人々のご恩を忘れないことです。

三番目は「悲田(ひでん)」。これには二種類あって、貧しい人々にお金や物を提供する布施と、今困っている人々に救いの手を差し伸べる行為のことです。

例えば、熊本の被災地に赴いて家や道路の復旧に力を貸すボランティアや、募金活動に協力することも「身施」という布施であり、被災者の方々が一日も早く平常の生活を取り戻されるのを祈ることも、「心施」という悲田となります。

 平安時代、この禅林寺の第7世・永観律師は、「みかえりの阿弥陀仏」を自ら宗教体験として感得された方ですが、同時に困っている人を救いたいという思いの強い人でもありました。

例えば、境内に多くの梅の木を植えて、実がなると拾い集め、すべて貧しい人々や病人に分け与えたり、薬草を植えて病む人に無料で差し上げたりしました。

また、罪を犯した人の牢獄に赴いて懺悔の念仏を共に唱えたり、境内に浴室を設けて貧しい人や病人に施浴したりしました。

中でも、梅の実を惜しげもなく分け与えたことは、多くの人に感謝され、世に「悲田梅(ひでんばい)」と呼ばれて、その子孫の木が今も境内に残っていて青い実を実らせているのです。

この永観さんの悲田の行為が京の人々に知られて、禅林寺という本当の寺名がいつのまにか「永観さんの寺」「永観堂」と呼ばれるようになったのです。

 この永観さんの業績を讃えて、禅林寺のご詠歌を作りました。

第1番  禅(しず)かなる林の寺の御仏は おん眼やさしく見返りたもう
第2番  春若葉 夏は青葉に秋紅葉 白梅薫る永観の寺

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