大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2016年(平成28年)8月のミニミニ法話・お説教

2016年(平成28年)8月

玄禮和尚のお説法

2016年(平成28年)8月

~ 第101回 「平和の祈りを」 ~

 境内に赤い夾竹桃の花が咲いています。玄関の前には百日紅(さるすべり)の赤い花も夏の到来を告げています。8月は鎮魂の夏です。

 昭和20年8月6日、午前8時15分。広島の上空で原爆が炸裂した直後の様子を、当時小学4年生の男子が詩に表しています。

「ピカッ!と光った/ パッとうつぶす/ おそるおそる目をあけると/ あたりはまっくらだ/ 外にとびだすと見るかぎり家は一軒もない/ 人も馬も、木も草も、電車も自動車も、みんな燃えている」

この詩は、原爆詩人で知られた峠三吉さんの自宅の押し入れの中から見つけられました。
別の小学生は、こう書いています。

「ピカッ! ドーン! それは大きな音でした。家はつぶれて、電信柱もたおれます。大きな家もたおれます。お婆さんは死にました。お母さんも死にました。町の人も死にました。お父さんも死にました。みんなみんな死にました。おじいさんも死んでしまいました。ぜんぶ死んでしまいました。」

 二作とも、原爆投下から七年後の作品だそうですから、ピカッ!ときた時は3歳前後の幼さだったのですね。わら半紙や広告の裏に鉛筆で幼い字を走らせています。

そこから聞こえる叫びは、生々しく胸を打ちます。あれから71年。ともすれば原爆体験が薄れかけている折、「忘れられてたまるか!」と訴えかけられているように思えてなりません。

 終戦後70年の昨年。私は7月に長崎を、9月に広島を訪れました。長崎では平和祈念像に詣で、広島では原爆死没者慰霊碑の前で読経し、犠牲者の冥福を祈りました。

慰霊碑に刻まれた「安らかにお眠り下さい 過ちは繰返しませぬから」の文が、今、広く人類全体の誓いとして強く訴えねばならぬ、と思いました。

 今や戦後生まれの、いわゆる「戦争を知らない子供たち」が日本の人口の7割を越えたといいます。戦争体験を持つ人が少なくなり、高齢化しているのです。

戦争の記憶や原爆の悲惨さの記憶が、年々薄くなっているのです。だから、語り継がねばなりません。何年たとうが、戦争の悲劇を忘れず、平和の尊さを大切にしなければならないのです。

 今年も8月4日、比叡山で諸宗教の代表が集まり、平和の祈りを捧げます。

法話一覧へ