大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2016年(平成28年)10月のミニミニ法話・お説教

2016年(平成28年)10月

玄禮和尚のお説法

2016年(平成28年)10月

~ 第103回 「歳月は川の流れの如く」 ~

 朝晩の冷気が少しずつ、秋の到来を告げています。永観堂の楓も少しずつ色づいています。

カレンダーもあと3枚になりました。月日の流れの早さを実感します。

 「行く川の流れはたえずして、しかも、もとの水にあらず。澱みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しく留まりたるためしなし。世の中にある人と住みかと、又かくの如し」
鴨長明が綴った『方丈記』を思い出します。

 こんな場面を想像して下さい。秋の深まる季節。老人と青年が語りあっています。

「四季の移り変わりの早いこと。年をとると、それが殊に早く感じられるものだよ」

そう言ったのは75歳の親鸞上人。25歳の若い弟子の唯円に向かって語っています。

倉田百三の『出家とその弟子』の一場面です。そして、その後で次のように述べています。

「この世は無常迅速というてある。この無常の感じは若くても分かるが、迅速の感じは老年にならぬと解らぬらしい。もう一年たったかと思って恐ろしい気がするよ」

 実は私も今75歳なので、この言葉が実感としてよく解るのです。過ぎてしまえば一年なんてアッという間です。

68歳で永観堂に入って以来、もう7年が経過しているのです。歳月は足早に駆け抜けていくのです。方丈記にいう川の流れのように。

 人生80年から90年時代になろうか、という今、私たちが克服しなければならない課題。

それは「貧困・病気・孤独・無為」。-貧しさと病と、ひとりぼっちの淋しさと、何もすることがない、という悲しさ。

 人間に“老い”は必ずやってくるのですね。病院関係者が詠んだ川柳があります。

・「分からないことは老化と医者はいい」
・「無理やりに生かされている薬漬け」
・「カロリーを説く保健婦は太りすぎ」

 そういえば、ある老人ホームの壁に「老化は走らないで、ゆっくり生きましょう」というポスターが貼ってありました。

勿論「廊下は走らないで、ゆっくり行きましょう」のパロディーですね。誰もが老いることは初体験なのです。

 「老いを知らぬは若さの高慢。病を忘れているのは達者の油断。死を問わぬは生きている驕り」

自分自身の問題なのです。一日一日を大切に生きましょう。

<写真・永観堂境内のせせらぎ>


※ 中西管長のラジオ講座放送のお知らせ

10月8日(土)朝7時~7時30分
ラジオ関西(CRK 神戸558 但馬1395)
「兵庫県高齢者放送大学」
*兵庫・大阪・京都のエリアで聞くことができます。

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