大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2008年(平成20年)12月のミニミニ法話・お説教

2008年(平成20年)12月

玄禮和尚のお説法

2008年(平成20年)12月

~ 第009回 「花にも一期一会あり」 ~

 掃きてすぐまた散る山茶花乙女色
秋の終わりから咲き始めた山茶花の花が、ようやく盛りを迎えました。

他に目ぼしい花がないころに咲くので、この頃庭木や垣根に育てている家が多くなりました。つややかな緑の葉に浮き上がって、白い花は白い花で美しく、淡い 紅色のそれもまたそれなりに美しいですね。

 以前、京都の洛北の詩仙堂には、大きな山茶花の木がありました。まるで雪が降り積もったように、真っ白な花をつけていました。

きれいに掃いたあとの庭に、さりげなく、風もないのにひらひらと花びらの舞い落ちる風情は、桜とはまた違うなんともいえない落ち着いた風情がありました。

 ところが、木が枯れてしまったのか取り払われて、今は見ることができません。
花にも一期一会があるのです。

 「春に先駆けて咲くのが梅の花ならば、山茶花はその年の終わりを惜しんで咲いてくれる花かもしれない」
と平岩弓枝さんが書いていました。

 「山の茶の花」と描いてサザンカ。山の茶の木に似ているから、そう名づけられたといわれています。

花の乏しいときの山茶花は貴重ですね。日を追うて弱まる日差しのなかで、今年最後の花のように、ひとり山茶花の花がさいている。

 平岩さんは、若い頃は梅の方を好んだそうです。梅が咲くと春が近い。それを嬉しく思っていたのですね
でも近頃は山茶花に愛着を寄せているのだそうです。

 「一年の終わりを飾る花を好きになるというのは、やはり年齢のせいかもしれない」と書いています。

 「二度とない人生だから、一輪の花にも無限の愛を」坂村真民さんの詩の一節です。

 二度とない人生に、花にも一期一会あり。
散る花びらは一瞬一瞬の命の尊さを、私たちに教えてくれているのです。
 
 
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