2011年(平成23年)1月のミニミニ法話・お説教
2011年(平成23年)1月
~ 第034回 「みかえりの心」 ~
新しい年の初めに、永観堂の本尊・みかえり阿弥陀仏の尊前に、この一年の天下和順と兵戈無用の平和な世界実現と、国富民安を祈念いた します。
天下和順(てんげわじゅん)・世の中が和やかで穏やかであること。
兵戈無用(ひょうがむよう)・軍隊や武器を用いることなく、平和であること。
国冨民安(こくぶみんなん)・国が豊かになり、人々が安らかであること。
いずれも無量寿経の中の言葉で、仏教が広まることにより、平和な世の中が実現されると説かれており、毎朝、勤行の中で唱えているのです。
永観堂の本尊は世界でも珍しく、立ち止まり振り返る姿です。仏が立ち止まり、振り返り、待つという「見返る」姿は、現代人に深い慈悲の働きを示していま す。
一つに、自らを顧みよ、との教え。
二つに、遅れる者、生きる勇気や希望を失くした者、孤独に泣くものに手を差しのべ、立ち上がり前に進もうとする者を待つ姿勢。
三つに、今の日本が棄てさった美徳や価値を見直し、再び生かそうという心。
この慈悲の働きを実現するために、仏は「あきず・あせらず・あきらめず、待ち続けているのです。
あわただしい生活を改め、美しい日本の四季の移ろいを味わい、先祖を敬い篤い信仰心を持ち、老いてもなお凜とした心で生きようという、スローライフ (ゆったり生活)を取り戻さねばなりません。
人々の生活や心の中のゆとり喪失が、引きこもりや過労死や自殺を生み出しているのです。
政治や経済、社会が閉塞し、不透明な今こそ「あきず・あせらず・あきらめず」という『みかえりの心』が必要ではないでしょうか。