2011年(平成23年)2月のミニミニ法話・お説教
2011年(平成23年)2月
~ 第035回 「花信風のように」 ~
2月4日は立春。暦の上では春ですが、北国は豪雪の中。光の春の到来が待たれます。
1月の小寒から4月の穀雨の頃にかけて吹く風を、「花信風」といいます。
中国では、虫はそれぞれの季節に生まれ、そして死んでいくけれど、それは季節の風が虫の命を動かし育てる、と考えられていました。
虫だけでなく、風は草木の命をも呼び覚まして、それぞれの季節に花を咲かせます。小寒には梅・椿・水仙を。立春には黄梅や桜桃(ゆすら)を「春だよ。起き なさいよ」と風が吹いて起こすのです。
花信風は季節の風、というだけではありません。今、人生の冬の中にいて、生きる勇気をなくしかけている人、悲しみや苦しみを抱えている人の心の中に、誰 かのなにげない一言が、仕草や笑顔が、勇気や希望を与えることがあります。それこそ、心の花を咲かせる「花信風」なのです。
「夜回り先生」こと水谷修ざんの講演を聴いたことがあります。自分の存在を学校や家庭で否定されたり、阻害されて夜の街を徘徊する少年少女たちに「早く 帰れよ」とか、「人生の主役は君だよ」と声をかけておられるのです。
世の中で誰一人、自分を必要としてくれないと思うと、「どうせ自分なんか」と自暴自棄になる少年たち。
幼い時から、母親が後ろから見てくれている、と感じたり、「お母さんはあなたが必要なのよ」と抱きしめられることがあれば、自分は大切に思われているとい う存在感・重要感を自覚することでしょう。
「和顔愛語先意承問」と無量寿経に説かれています。
和顔(わげん) 明るい笑顔
愛語(あいご) 愛情のこもった言葉
先意承問(せんいじょうもん) 相手を思いやる心
これが花信風となって、人の心を育て豊かにするのです。
和尚の法話を「花信風法話」と名づけたのは、ささやかでも心の応援団になれば、という願いが込められているのです。
あなたも、周囲の人の心に、小さくてもいい、美しい花を咲かせる心地よい花信風を吹かせてみませんか。